2019/1 映画と本:『羆嵐』の緊迫感の凄さ
映画記事が一年飛んでしまった…。
2018の映画記録かなり管理が雑なので整理したい。
気持ちを切り替えて今月摂取したカルチャーです。
【映画】
潜水服は蝶の夢を見る ★3.5
タイトルがまずいい、電気羊みたいなタイトルだけどワードが洗練されてる気がする。
左目以外すべてが麻痺してしまった雑誌編集長の男が左目の瞼の動きだけで周囲の力を借りながら本を書く話。実話が元で同タイトルの原作がある。
主人公が動けないので過去を回想したり、空想をしたりするんだが、詩的な語り口に合う穏やかな色彩の綺麗な映像で終始綺麗で穏やかな空気。
左目の瞼の動きだけでコミュニケーションを取る方法として相手が文字を読み上げて適切なタイミングで瞬きを送るというもので途方もない感じがする。その途方もない感じをひたすら後ろで文字の読み上げを流して表現していい。
空想のそのどっぷり入る感じがまさに潜水服の中からという映像で浸れた。
ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア ★5.0
死を間近に控えた二人が病院で出会い、最後にやり残したことを清算するため犯罪に手を染めながらも海を目指す話。
近い内容だと最高の人生の見つけ方もかなり良かったんだが、ノッキンオンヘブンズドアの二人は若いし多くを知らないのがかなり哀愁と勢いがある。刹那的な生き方という要素がでかくて締め付けられる。
最初は真面目だった片方が段々と必死に生きていく感じがいい。周りに迷惑かけまくりだし犯罪だしこんなことやっちゃいけないのは分かるんだが、こうなりたい気持ちになる映画。
余命告げられた時海に行ける友達が欲しい。
ライ麦畑の反逆児 ★4.5
画像がまだないので後々追加。
ライ麦畑でつかまえてのJDサリンジャーの伝記映画。
劇中のセリフにもあるようにライ麦畑のホールデンはサリンジャー自身なのだしライ麦畑でつかまえての映画としても見ていいと思う。
大学で文学の講義を受けて恩師と出会い、物語は何たるかをサリンジャーが学んでいくシーンは創作に関心がある人だったら面白い。しかし、サリンジャーは努力して上りつめるというよりは、才能が既にある人が洗練していく過程という感じではある。
音楽とセリフ選びがいい映画だった。サリンジャーが得た創作の技法が劇中でも述べられるがこの映画もそれに則って作っている様に感じる。
説明しすぎない、語り過ぎないというバランスがあった。
上映館が少なすぎる…。
【本】
以下の九冊を読みました。読んだ順。
詳しく書くのは特に興奮した一冊にします。
天の光はすべて星/フレドリックブラウン
窓から逃げた100歳老人/ヨナスヨナソン
あほうがらす/池波正太郎
緑魔の町/筒井康隆
流れよ我が涙、と警官は言った/フィリップKディック
興奮したのは羆嵐です。
デンデラという映画で雪山で熊との対決のシーンが迫力があり、どうあっても熊には勝てない…と思った時この本のタイトルを思い出したので読んだ。デンデラの原作でも結構参考にしてるみたいです。
この本は実際に開拓途中の北海道の小さな村が熊に襲われて大きな被害を受けた事件を元に書かれている。
この本の凄いところは人物や集団の心理描写の精密なところにある。
例えば最初の被害者が出た後、その死体をそのまま置いておけばそれを食べるのでもう襲われない…と村の住民は葬式をしながらも安心しているという打算的なシーン。
銃さえあれば大丈夫!と思っていたらただ銃で撃つだけでは歯が立たないことが分かり、大人数の男が何の役にも立たない集団になってしまうシーン。
熊はいないのに痕跡を見つけただけで熊を見た事のない人間にも恐怖が伝播するシーン。
他には助けに来た警察官のがんばってるけど微妙に的外れなところとかとにかくそういった実際にその状況になったら誰もが感じるだろう心理が的確に書かれている。なので大きな脅威を目の前にしたときの緊迫感がすごい。
読み終わるまでずっと動悸がやまない様な本だった…。すごい読書体験。
読んでね!!
以上です、来月も書けたらいいね。